【書評】デーリー東北新聞朝刊1面コラム「天鐘」に『小説・特定秘密保護法 追われる男』

『小説・特定秘密保護法 追われる男』(北沢栄著)がデーリー東北新聞2/12付朝刊1面コラム「天鐘」に掲載されました。


天鐘(2月12日)


 「政府職員3人が重軽傷 青森三沢米車両と衝突」。三沢市で起きた交通事故が某新聞にベタ記事で載った―ことからその小説は始まる▼北沢栄著『小説・特定秘密保護法―追われる男』(産学社)が昨年12月、同法施行と共に刊行された。フリージャーナリストと同紙記者が取材を進めると「米軍三沢基地に次世代最新鋭戦闘機を導入、自衛隊にも配備」という特ダネに辿(たど)り着く▼一方、警視庁公安部は取材を徹底捜査、ジャーナリストの友人に中国人の友人がいることを掴(つか)む。官邸と同庁は「中国に情報が流れた」とのシナリオを描き、同法違反の逮捕第1号として発表するが、具体的容疑内容は「申し上げられない」の一点張り▼会見で食い下がる記者達に、官房長官が「国の安全に遺漏があってはならない特定の重要秘密を指し、その秘密をいちいち明かす訳にはいかない。秘密を守ることこそが法律の趣旨だ」と弁明―が序盤の粗筋▼法は必要性があってつくられる。過程のケーススタディーでなかなかイメージは湧かないが、施行後に「こういうことか」とよく気付かされる。でも時既に遅し。官房長官の弁明は見事に〝法の本質〟を突き、フィクションとは思えないリアルさで迫る▼過激派組織「イスラム国」による邦人殺害事件で政府は検証を開始。安倍首相のカイロでの中東施策演説と事件の関係も対象だが、菅官房長官は「インテリジェンスに関わる部分が」と早速秘密保護の煙幕を張る。脚本の制作中か、不都合な秘密に近づくなとの警告か。やはり事実は小説よりも奇なりだ。


デーリー東北新聞社ホームページより転載:http://www.daily-tohoku.co.jp/

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