『小説・特定秘密保護法 追われる男』

◉逮捕第1号は、あなたかもしれない。
“萎縮の法”の施行後に、いったい何が起こり得るのか。
権力の腐敗を追及してきたジャーナリストが抉る特定秘密保護法の真実。
官僚支配の強化に警鐘を鳴らす衝撃のシミュレーション・ノベル!

978-4782533994
小説だからわかる、危機の本質。
ジャンル
一般・その他  
タイトル
小説・特定秘密保護法 追われる男
著者・編者・訳者
北沢栄著
発行年月日
2014年 12月 10日
定価
1,760円
ISBN
ISBN978-4-7825-3399-4 C0036
判型
四六判並製
頁数
312ページ

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著者・編者・訳者紹介

【著者紹介】北沢 栄(きたざわ・さかえ)

1942年12月東京生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。
共同通信経済部記者、ニューヨーク特派員などを経て、フリーのジャーナリスト。
2005年 4月から 08年 3月まで東北公益文科大学大学院特任教授(公益学)。
公益法人問題、公務員制度、特別会計などに関し、これまで参議院厚生労働委員会、同決算委員会、同予算委員会、衆議院内閣委員会で意見を陳述。
07年11月から08年3月まで参議院行政監視委員会で客員調査員。
10年12月「厚生労働省独立行政法人・公益法人等整理合理化委員会」座長として、報告書を取りまとめた。
主な著書に『公益法人 隠された官の聖域』(岩波新書)、『官僚社会主義 日本を食い物にする自己増殖システム』(朝日選書)、『静かな暴走 独立行政法人』(日本評論社)、『亡国予算 闇に消えた「特別会計」』(実業之日本社)、近著に中小企業小説『町工場からの宣戦布告』(産学社)。
訳書に『リンカーンの三分間ゲティズバーグ演説の謎』(ゲリー・ウィルズ著・訳、共同通信社)。
日本ペンクラブ会員。

内容

 2014年12月10日の特定秘密保護法施行に伴い、公安警察の捜査線上に次々に浮上してくる“容疑者"たち。
 フリージャーナリストの今西譲は、米軍三沢基地に配備される最新鋭戦闘機の情報をつかみ、報道を開始するのだが……。
 秘密法がもたらす恐るべき社会を描く迫真のシミュレーション・ノベル!

秘密法の一撃で見えてきた社会の全体像は、あまりに恐ろしい。
それは、誰もが公安に目を付けられたら最後、逮捕され得る社会だ。
「国家機密を暴いたら逮捕する」というのが、特定秘密保護法の本質なのだ。
すると、特定秘密を暴いた個人は誰もが追われる身になる。
(本文より)

目次

プロローグ
第1章 影の男
第2章 汚染
第3章 罠
第4章 監視
第5章 衝突

書評

週刊プレイボーイ「“本”人襲撃」(2015/2/23号)

昨年末施行の秘密保護法をジャーナリストが小説の形でシミュレーション。”世紀の悪法”と呼ばれる理由がわかった!
高田昌幸氏(高知新聞記者)

秘密保護法が存在する社会。そこに突入してから2カ月になる。この法律の問題点を記した専門書、警鐘を鳴らす論評書などは、すでに多数出た。本書は小説仕立て。著者は小説家ではないし、ストーリーや登場人物のプロットなどに若干の稚拙さを感じるけれども、一読する価値はある。
「ありそうだな」「怖いな」と感じたのは、主人公の女性記者に近づいてくる公安警察官だ。米軍三沢基地に出入りする軍事関連業者を装って、捜査員は近づいてくる。取材者に探りを入れ、記者仲間との関係を 暴こうとし、偽情報を掴ませようともする。
私にも若干の経験はあるが、権力を相手にした調査報道を続けていると、素性のよく分からない情報に遭遇する。「内部文書」が匿名で送られてきたり、名乗らぬ・身分を明かさぬ「関係者」が現れたり。あれはいったい何か。本当の情報・関係者かもしれないし、偽情報を掴ませようとしているのかもしれない。本田靖春氏の名著「不当逮捕」にもあるように、権力側が「自らの不都合を隠す」ため、あるいは「組織の裏切り者をあぶり出す」ため、敢えて偽情報を流すなどの実例は、現実に起きる。それを見極めることができなかったら・・・?
そういう怖さが本書にはにじみ出ている。
もう一つ。本書での怖さは秘密保護法違反容疑での初の強制捜査に備え、警察側が事前に「物語」にこだわる点である。初の逮捕事案は、「国民にとってわかりやすいストーリーになっているか」「なるほどと共感を得られるか」。そこに警察幹部は腐心していく。
当たり前とのことじゃないか、と感じる人もいるかもしれない。しかし、そうではない。秘密保護法違反容疑の捜査で必要なのは、「物語」「ストーリー」なのだ。少なくとも最初は。そして、捜査情報のすべてを握る捜査側は、集めた情報を取捨選択し、ストーリーに合わせることができる。過去の冤罪事件を持ち出すまでもなく、捜査する側が自在に証拠を「操る」事例は、これまでも多数、見せつけられてきた。
事件の「ストーリー」を描く警察官僚や官邸中枢の人物たち。そこが一番の読みどころだと思った。(Amazon.co.jpカスタマーレビュー〈2015/1/31掲載〉より転載)

デーリー東北新聞 朝刊1面コラム「天鐘」(2015/2/12付)

「政府職員3人が重軽傷 青森三沢米車両と衝突」。三沢市で起きた交通事故が某新聞にベタ記事で載った―ことからその小説は始まる▼北沢栄著『小説・特定秘密保護法―追われる男』(産学社)が昨年12月、同法施行と共に刊行された。フリージャーナリストと同紙記者が取材を進めると「米軍三沢基地に次世代最新鋭戦闘機を導入、自衛隊にも配備」という特ダネに辿(たど)り着く▼一方、警視庁公安部は取材を徹底捜査、ジャーナリストの友人に中国人の友人がいることを掴(つか)む。官邸と同庁は「中国に情報が流れた」とのシナリオを描き、同法違反の逮捕第1号として発表するが、具体的容疑内容は「申し上げられない」の一点張り▼会見で食い下がる記者達に、官房長官が「国の安全に遺漏があってはならない特定の重要秘密を指し、その秘密をいちいち明かす訳にはいかない。秘密を守ることこそが法律の趣旨だ」と弁明―が序盤の粗筋▼法は必要性があってつくられる。過程のケーススタディーでなかなかイメージは湧かないが、施行後に「こういうことか」とよく気付かされる。でも時既に遅し。官房長官の弁明は見事に〝法の本質〟を突き、フィクションとは思えないリアルさで迫る▼過激派組織「イスラム国」による邦人殺害事件で政府は検証を開始。安倍首相のカイロでの中東施策演説と事件の関係も対象だが、菅官房長官は「インテリジェンスに関わる部分が」と早速秘密保護の煙幕を張る。脚本の制作中か、不都合な秘密に近づくなとの警告か。やはり事実は小説よりも奇なりだ。
デーリー東北新聞社ホームページより転載)
図書新聞(2015/2/14号)

山形新聞朝刊読書欄(2015/1/25付)
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